障害や難病を抱える方々の日常生活や社会参加を支援する「障害福祉サービス」。
この公的サービスは、2024年4月の法改正・報酬改定を経て、より多様なニーズに応えられるよう進化しています。
しかし、「制度が複雑でよくわからない」「自分や家族はどんなサービスが使えるの?」といった声も少なくありません。
この記事では、障害福祉サービスの全体像から、具体的なサービスの種類、利用手続き、費用まで、最新情報を交えて分かりやすく徹底解説します。
あなたの「困った」を解決し、より良い生活を送るための一歩を踏み出すための羅針盤としてご活用ください。
障害福祉サービスとは? あなたの生活を支える大切な制度
障害福祉サービスとは、障害のある方や難病を抱える方が、地域の中で自立した日常生活や社会生活を送れるように支援するための公的なサービスです。
根拠となる法律は「障害者総合支援法」(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)で、この法律に基づき、個々の状況や必要性に応じた様々な支援が提供されます。
★「WAMNET障害者福祉制度解説」イメージ図参照
障害者総合支援法の目的
この法律は、障害の有無にかかわらず、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現を目指しています。
単に介護を提供するだけでなく、就労支援や地域生活への移行支援などを通じて、障害のある方々が希望する生活を実現することに重きを置いているのが特徴です。
2024年4月施行の改正・報酬改定のポイント
障害福祉サービスは、社会情勢や利用者のニーズの変化に対応するため、定期的に見直しが行われます。
直近では2022年に障害者総合支援法が改正され、その内容の多くが2024年4月1日から施行されました。
同時に3年に一度の障害福祉サービス等報酬改定も行われ、サービスの評価や内容にいくつかの重要な変更が加えられています。
より本人の希望や能力に合った就労先を選択できるよう、2025年度から「就労選択支援」が新たに始まります。
福祉・介護職員の処遇改善加算が一本化されるなど、人材確保と定着に向けた取り組みが強化されています。
強度行動障害のある方への支援体制が手厚くなるなど、より専門的なケアが必要な方への報酬が見直されました。
事業所における虐待防止措置が未実施の場合、基本報酬が減算される制度が新設され、利用者の安全確保がより厳格に求められるようになりました。
これらの改正は、利用者一人ひとりの希望をより尊重し、質の高いサービスを提供するためのものです。
一目でわかる! 障害福祉サービスの全体像
障害福祉サービスは、大きく分けて①「介護給付」、②「訓練等給付」という2つの「障害福祉サービス(自立支援給付)」と、市町村が主体となって提供する③「地域生活支援事業」の3つの柱で構成されています。
- 介護給付(障害福祉サービス)
日常生活で必要となる身体介護や家事援助、通院の付き添いなど、主に「介護」の支援を受けるためのサービスです。 - 訓練等給付(障害福祉サービス)
自立した生活や社会参加、就労に必要な知識や能力を身につけるための「訓練」を中心としたサービスです。 - 地域生活支援事業(市町村実施)
市町村が地域の実情に応じて柔軟に実施するサービスで、移動支援や相談支援、日常生活用具の給付などがあります。
これらのサービスは、利用者の障害支援区分(障害の程度を示す6段階の区分)や本人の意向、生活環境などを総合的に勘案して、どのサービスをどのくらい利用するかが個別に決定されます。
例えば、日中は「生活介護」(介護給付)を利用し、夜間は「施設入所支援」(介護給付)を利用するといった組み合わせも可能です。
【種類別】あなたに合ったサービスはどれ?全17種類を徹底解説
障害福祉サービスには、介護給付と訓練等給付を合わせて17種類のサービスがあります。ここでは、それぞれのサービス内容を一覧でご紹介します。
日常生活を支える「介護給付」(9種類)
主に身体的な介護や生活援助が必要な方向けのサービスです。
1. 居宅介護(ホームヘルプ)
自宅での入浴、排泄、食事等の介護や、調理、洗濯、掃除等の家事援助を行います。
2. 重度訪問介護
重度の肢体不自由や知的・精神障害があり常時介護が必要な方に、自宅での総合的な介護や外出時の移動支援を行います。
3. 同行援護
視覚障害により移動が著しく困難な方の外出に同行し、移動の援護や情報提供(代読・代筆)を行います。
4. 行動援護
知的・精神障害により行動上著しい困難があり常時介護が必要な方に、行動する際の危険回避や外出支援を行います。
5. 療養介護
医療と常時介護を必要とする方に、医療機関で機能訓練、看護、医学的管理下での介護等を提供します。
6. 生活介護
常時介護が必要な方に、昼間、施設で入浴、排泄、食事等の介護や、創作的・生産的活動の機会を提供します。
7. 短期入所(ショートステイ)
介護者の病気等の理由で、短期間、施設に入所し、入浴、排泄、食事等の支援を受けられます。
8. 重度障害者等包括支援
常時介護が必要で意思疎通が困難な方に、居宅介護など複数のサービスを包括的に提供します。
9. 施設入所支援
施設に入所する方に、夜間や休日に、入浴、排泄、食事等の介護を提供します。
自立と就労を目指す「訓練等給付」(8種類)
自立した生活や一般企業等での就労を目指す方向けのサービスです。
1. 自立訓練(機能訓練・生活訓練)
身体機能や生活能力の維持・向上のため、一定期間、リハビリや生活に関する訓練を行います。
2. 宿泊型自立訓練
一定期間、事業所の住居で生活し、食事や家事など日常生活能力の維持・向上を目指す訓練を行います。
3. 就労移行支援
一般企業への就職を目指す方に、職業訓練、求職活動支援、職場定着支援などを行います。
4. 就労継続支援(A型・B型)
一般企業での就労が困難な方に、働く場を提供します。A型は雇用契約を結び、B型は結びません。
5. 就労定着支援
就労移行支援等を利用して就職した方が長く働き続けられるよう、生活面・仕事面の課題解決を支援します。
6. 自立生活援助
一人暮らしを始めた障害のある方の自宅を訪問し、様々な相談に応じ、安定した地域生活を支援します。
7. 共同生活援助(グループホーム)
地域にある住居で、数人の障害のある方が共同生活を送ります。相談や食事・入浴等の援助が受けられます。
8. 就労選択支援(2025年度開始)
就労を希望する方が、自身の能力や希望に合った仕事や働き方を見つけるためのアセスメントや相談支援を行います。
サービスの利用方法と費用
障害福祉サービスを利用するには、お住まいの市区町村への申請が必要です。
申請から利用開始までの基本的な流れ
気になる費用は?利用者負担の仕組み
サービスの利用にかかる費用は、原則として1割が自己負担となります。ただし、世帯の所得に応じて月々の負担上限額が定められており、それを超える負担は発生しません。
世帯の所得状況 | 月額負担上限額 |
---|---|
生活保護受給世帯 | 0円 |
市町村民税非課税世帯 | 0円 |
市町村民税課税世帯(所得割16万円未満) | 9,300円 |
上記以外 | 37,200円 |
※食費や光熱水費、日用品費などは別途実費負担となります。
障害福祉サービスは、障害のある方々が地域で自分らしく、安心して暮らしていくための重要な社会資源です。制度は多岐にわたりますが、一人ひとりの状況に合わせて柔軟に利用できるよう設計されています。
「どのサービスが自分に合うかわからない」「手続きが難しそう」と感じたら、一人で抱え込まず、まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、障害者基幹相談支援センターに相談してみてください。専門の相談員が、あなたに合ったサービスを見つける手助けをしてくれます。
この記事が、あなたやあなたの大切な人が、必要な支援につながるための一助となれば幸いです。