日本人と国際結婚をした外国人の夫や妻、または日本人の子どもとして生まれた子が日本で生活する場合には「日本人の配偶者等」という在留資格が必要になります。
今回は、この在留資格「日本人の配偶者等」の概要についてご説明させていただきます。
在留資格「日本人の配偶者等」の身分とは
「日本人の配偶者等」の在留資格に当たる身分または地位については、入管法で「日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者」とされており、具体的には、次のとおりとなります。
1. 日本人の配偶者
日本人の配偶者とは、法的に有効な婚姻をした配偶者を指し、内縁の配偶者や同性婚のパートナーは含まれません。
また、同居して共同生活を営んでおり(同居の予定があり)、夫婦としての実態があることが必要です。
※内縁の配偶者や同性婚の場合は、「特定活動」など別の在留資格が必要になります。
★偽装結婚の問題!
現在、法的には有効な婚姻関係にあっても、外国人が日本で単純労働や風俗業などで就労する目的で日本人との婚姻を偽る「偽装結婚」のケースが多々あります。
このため、出入国在留管理局では、同居していないなど婚姻の実体を伴っているか疑わしい場合には、偽装結婚の可能性があるとして在留資格は許可していません。
また、たとえ同居していたとしても、日本人がブローカーなどから金銭をもらって形式上同居しているだけのケースもあるため、在留資格の申請時には、実体を伴った夫婦であるという十分な証拠を示す必要があります。
証拠としては次のようなものがあります。
・親戚や友人などと2人で一緒に写った写真(結婚祝いなどの写真)
・家や部屋の写真(2人の生活実態が分かるもの)
・交際経緯説明書(2人がどうやって出会ったか、どのようにお互いに結婚の意思を持つに至ったか、2人がコミュニケーションをとっている共通言語は何かなど)
※SNSなどの会話の画面のスクリーンショットを求められる場合もあります。
・語学力を証明するもの(2人がコミュニケーションをとっている共通言語のもの)
・両親の上申書
夫婦の年齢差が親子ほど離れている場合、結婚までの交際期間が極端に短い場合、国際結婚相談所やマッチングサイトで出会っている場合、外国人の配偶者に離婚歴が多い場合さらには結婚ブローカーが関与している場合は、特に偽装結婚が疑われ厳しく審査されますので、漏れのない十分な証拠書類が必要になります。
2. 日本人の特別養子
法律上の特別養子の身分を有している者をいいます。
特別養子縁組は、民法の規定に基づいて家庭裁判所の審判により成立し、生みの親との身分関係を切り離し、養父母との間に実の子とほぼ同様な関係が成立します。
ただし、特別養子縁組が成立する要件としては以下のようなものがあり、在留資格の申請にはハードルが高いものとなっています。
なお、一般の養子縁組は認められていません。
実父母による子の監護が著しく困難または不適当であること等の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認められることが必要です。
② 実親の同意
養子となるお子さんの実父母の同意がなければなりません。
ただし、実父母がその意思を表示できない場合または、実父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となるお子さんの利益を著しく害するような実態がある場合には、実父母の同意が不要となることがあります。
③ 養親の年齢
養親となるには、配偶者のいる夫婦でなければならず、夫婦共同で縁組をすることになります。
また、養親となる方は25歳以上でなければなりません。
ただし、養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合には、もう一方は20歳以上であれば養親となることができます。
④ 養子の年齢
養子になるお子さんの年齢は、養親となる方が家庭裁判所に審判を請求するときに15歳未満である必要があります。
ただし、お子さんが15歳に達する前から養親となる方に監護されていた場合には、お子さんが18歳に達する前までは、審判を請求することができます。
⑤半年間の監護
縁組成立のためには、養親となる方が養子となるお子さんを6ヵ月以上監護していることが必要です。
そのため、縁組成立前にお子さんと一緒に暮らしていただき、その監護状況等を考慮して、家庭裁判所が特別養子縁組の成立を決定することになります。
※在留資格の申請の際には、「特別養子縁組届出受理証明書」または「日本の家庭裁判所発行の養子縁組に係る審判書謄本及び確定証明書」が必要になります。
3. 日本人の子として出生した者
「日本人の子として出生した者」とは日本人の実子をいいます。
認知された嫡出でない子も含まれますが、養子は含まれません。
具体的には、次のとおりです。
※1本人の出生後に父または母が日本国籍を離脱した場合も、日本人の子として出生した者になります。
※2 「日本人の子として出生した者」は、「日本で出生したこと」が要件とされていないので、外国で出生した者も含まれます。
② 本人の出生前に父が死亡し、かつ、その父が死亡のときに日本国籍を有していた場合
外国人配偶者の在留資格申請について
日本人と国際結婚する外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格申請に当たっては、①日本で結婚する場合と②外国(外国人配偶者の母国)で結婚し配偶者を呼び寄せる場合で流れが変わります。
なお、どちらを選ぶかについては、外国人配偶者の母国の婚姻手続の方法、母国が短期滞在のビザ免除国に当たるか、申請先の出入国在留管理局の取扱い方針などを考慮の上、ご判断願います。
1. 日本で結婚する場合
現在何らかの在留資格を持つ外国人が、日本国内で日本人と結婚した場合、今の在留資格から「日本人の配偶者等」へ在留資格変更許可申請を行うことになります。
これは、留学や就労などで既に日本に在留している外国人だけではなく、結婚手続のためだけに短期滞在ビザで日本に入国して結婚をする場合も含めます。
※「日本人の配偶者等」の在留資格申請に当たっては、両国で婚姻済みであることが基本的要件ですので、事前に外国人の母国で婚姻手続を済ませておく必要があります。
たとえば、外国人の配偶者が5年の在留資格を持っており、今後も転職の予定が全くない場合、在留資格を「日本人の配偶者等」に変更すると、かなりの確率で1年の在留資格になってしまいます(次回更新時には3年など)。
ですので、3年以上の在留資格を持っている場合は、退職や転職の時に、「日本人の配偶者等」への変更を検討した方がいいでしょう。
◆「短期滞在」から「日本人の配偶者等」へ在留資格変更許可申請の注意点
・原則、「短期滞在」からの在留資格変更は「やむを得ない特別な事情」がない限り認められません。
「やむを得ない特別な事情」とは、子供が生まれた場合や病気になってしまったような場合などに限られていますので、事前に申請先の出入国在留管理局(永住審査部門)に変更許可申請が認められるか事前相談をしておいた方がよいでしょう。
・提出先出入国在留管理局で「短期滞在」からの変更許可が困難としている場合、「日本人配偶者等」の在留資格認定証明書交付申請を行い、この証明書を添付して変更許可申請を行う方法もありますが、これについても事前に可能かどうか出入国在留管理局に相談して確認しておく必要があります。
・短期滞在での在留期間は90日間までのため、この在留期間に間に合うように、前もって婚姻手続と変更許可申請で必要となる資料を調べ、本国でしか取得できない出生証明、独身証明などを取っておく必要があります。
2. 外国人配偶者の母国で結婚する場合
この場合、日本人が現地に行って正式に結婚手続を行い、日本人だけが先に帰国し、住所地の区役所等に婚姻届を提出します。
そして、出入国在留管理局に「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書交付申請を行い、交付された証明書を外国人配偶者に国際郵便で送付し、日本に呼び寄せます。
日本人の配偶者と婚姻関係が解消された場合
「日本人の配偶者等」の在留資格をもって在留する日本人の配偶者が、日本人配偶者と離別、死別等により婚姻関係が解消され、そのまま6カ月以上日本に在留している場合(正当な理由がある場合を除く)は、在留資格が取り消されることになります。
在留資格を取り消されれば、30日を超えない範囲内で出国するための期間が指定され、その期間内に出国しない場合は、退去強制(強制送還)となります。
また、3年以下の懲役若しくは禁錮、300万円以下の罰金などの罰則の対象となりますので注意が必要です。
なお、①日本人の配偶者との婚姻期間が3年以上で離婚した場合、②監護・養育する日本人の実子がいる場合、③日本人の配偶者と死別した場合は、「定住者」の在留資格を取得できる場合がありますので、「定住者」への在留資格変更について出入国在留管理局に相談されることをおすすめします。
簡単ですが以上が在留資格「日本人の配偶者等」についての概要になります。参考になればうれしいです。