日本に何らかの在留資格で在留している外国人は、「永住者」の在留資格に変更することで在留資格の更新手続きや転職時等の届出が不要となるなどのメリットを受けることができます。
今回は、この在留資格「永住者」の概要についてご説明させていただきます。
在留資格「永住者」の身分とは
「永住者」の在留資格の身分・地位は、入管法で「法務大臣が永住を認める者」とされています。
「永住を認める者」ということで、まずは、通常の在留資格にある在留期間がなくなりますので、在留期間の更新手続きが不要となります。
また、永住者は、通常の在留資格と比べて次のようなメリットがあります。
①在留期間の更新が不要になる。
※ 7年に1回の在留カードの有効期限の更新手続きは必要となります(顔写真の更新やカードの劣化を防ぐためであって審査ではありません)。
②在留資格の変更が不要になる。
一度、「永住者」の在留資格を取得すると、転職や離婚(死別)をしても永住者として日本で生活をすることができます。
③会社を入退社した際に行う届出、配偶者と離婚した際に行う届出が不要になる。
ただし、「永住者」の在留資格を持っていても、通常の在留資格と同様に、入管法上の違反行為があれば在留資格の取消となります。
また、入管法上の退去強制事由に該当すれば、当然、退去強制(強制送還)となるので注意が必要です。
なお、永住者の在留資格が取消しになるケースは次のとおりです。
①再入国許可・みなし再入国許可を取得しないまま出国した場合
②正式な再入国許可を取得して出国したが再入国許可の期限が切れてしまった場合
③みなし再入国許可制度を利用して出国し、1年を超えてしまった場合
※みなし再入国は1年以内に帰国する場合のみ有効です。
→なんらかの在留資格について在留資格該当性があればその在留資格、それらがなければ事案に応じて定住者や短期滞在の在留資格となります。
④過去日本に入国する際に虚偽申請・偽造書類で申請し、在留許可を受けたことが発覚した場合
⑤新住居地の届出をしなかった場合や虚偽の住居地を届け出た場合
→転居の際、住居地の届出を忘れないようにすることが必要です。
⑥退去強制事由に該当した場合
・無期または1年を超える懲役もしくは禁錮に処せられた者
・麻薬・覚せい剤等薬物違反により有罪判決を受けた者
・売春に直接関係がある業務に従事する者
→「永住者」は基本、職業選択は自由ですが、性風俗業に従事することはできません。
〇 Point 今後の「永住者」の在留資格取消し厳格化!!
2024年6月、入管法が改正となり、「永住者」の在留資格の取消事由が追加され、永住者の在留要件がより厳格に扱われることとなりました。
具体的には、
が追加されました。
これについて、さらに詳しく言うと、支払うべき公租公課(税金・社会保険料)があることを知っており、支払能力があるにもかかわらず、公租公課の支払をしない場合などに永住者の在留資格が取り消されることとしています。
このような場合は、在留状況が良好とは評価できず、「永住者」の在留資格を認め続けることは相当ではないと考えられるからです。
※病気や失業など、本人に帰責性があるとは認めがたく、やむを得ず公租公課の支払ができないような場合は、在留資格を取り消すことは想定していません。
また、今回の改正では、取消事由に該当する場合であっても、直ちに在留資格を取り消して出国させるのではなく、引き続き日本国内に在留することが適当でないと認められる悪質な場合を除き、法務大臣が職権で永住者以外の在留資格(「定住者」など)への変更を許可することとしています。
なお、この法律の改正は、2027年6月までをめどに施行されます。
永住者の在留資格取得要件
「永住者」の在留資格を取得するには、大きく分けて次の3つの要件が必要となります。
素行が善良であること
2. 独立生計要件
独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
3. 国益要件
法務大臣が日本の利益に合致すると認めたこと
※国益要件の判断は法務大臣の広範な裁量にゆだねられており、時機によって国益の内容は変化します。
また、これらを具体的に説明すると、以下のとおりになります。
1.素行善良要件
次のいずれにも該当しない者であること。
①日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられたことがある者(刑の消滅の規定の適用を受ける者は除く)。
②少年法による保護観察が継続中の者。
③日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者。
※③に該当しないためには、(ⅰ)ご自身が交通違反を繰り返していないこと(過去5年間で白切符や青切符などの軽微な違反が3~4回まで)、(ⅱ)家族滞在の資格を有する家族(配偶者、子供)の資格外活動が週28時間を超えている場合、きちんと働いている時間を適正(週28時間以内)にしてから、5年間の経過が必要となります。
2. 独立生計要件
日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その者の職業又はその者の有する資産等から見て将来において安定した生活が見込まれることをいいます。
すなわち、生活保護を受給しておらず、現在及び将来においていわゆる「自活」をすることが可能と認められる必要がある。
独立生計要件は、必ずしも申請人自身で判断されるものではなく、申請人が配偶者等とともに構成する世帯単位で見た場合に安定した生活を続けることができると認められる場合には、これに適合するものとして扱われます。
例えば、申請人本人が主婦で働いていない場合は、配偶者が独立生計要件を満たせば本人が無職で働いていない場合でも永住申請が可能な場合もあります。
また、必ずしも収入のみで判断することなく、世帯単位において預貯金、不動産等の一定の資産を有している場合には、これに適合するものとして扱われます。
収入のめやすとしては、具体的には、独身の場合、直近5年間の年収が300万円以上であることが望ましいです。
扶養家族がいる場合は、年収300万人に加え、扶養家族一人当たり70~80万円加算して考える必要があります。
したがって、扶養家族5人となると年収650~700万円が必要となります。
また、貯蓄額も最低100万円くらいはある方が良いです。
3. 国益要件
次の(1)から(5)までのいずれにも適合する者であること。
(1)本邦在留要件:長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していると認められること。具体的には次のとおり。
① 引き続き10年以上日本に在留していること。
ただし、この10年以上の期間のうち就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)または居住資格をもって引き続き5年以上日本に在留していることを要します。
※「引続き10年」の考え方:
・年間100日以上、つまり1年の3分の1以上出国していると「引き続き」とは判断されなくなります(どの区間で区切っても)。
・1回で連続して3カ月以上出国している場合も「引き続き」には反してしまうことがあります(どの区間で区切っても)。
・新型コロナウイルスの影響で日本に戻れなかったなど特別の事情がある場合は「引続き」として認められるケースがあります。
※永住許可申請の直近5年間を就労資格及び居住資格の両方の在留資格で在留している場合は、その在留資格による在留期間を合計した期間で評価されます。
②現に有している在留資格について、入管法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
※当面、在留期間「3年」を有する場合は「最長の在留期間をもって在留している」ものとして取り扱われます。
(2)公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに入管法に定める届出等の義務)を適正に履行していることを含め、法令を遵守していること。
(3)公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
(4)著しく公益を害する行為をするおそれがないと認められること。
(5) 公共の負担となっていないこと
4. 要件の特例
上記1~3の要件は、原則、全ての申請者に適用される要件になりますが、申請人が日本人の配偶者である場合など、次の(1)から(6)までのいずれかに該当する場合などは、特例として、これらの要件が緩和されます。
(1) 日本人、永住者または特別永住者の「配偶者」、「実子」または「特別養子」
※在留資格「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」を有していることを意味するものではありません。
→前述の1.素行善良要件及び2.独立生計要件に適合することを要しません。
→3.国益要件の本邦在留要件については、次のとおり緩和されます。
※在留資格が「技術・人文知識・国際業務」などの就労系資格であっても、日本人や永住者と結婚してから3年以上経過しており、直近1年以上を日本で暮らしているなら該当します。
② 実子または特別養子については、引き続き1年以上日本に在留していること。
(2) 日本人、永住者または特別永住者の「養子」(特別養子を除く。)
→前述の1.素行善良要件及び2.独立生計要件に適合することを要しません。
(3)「定住者」の在留資格を有する者
→前述の3.国益要件の本邦在留要件について、「定住者」の在留資格を付与された後、引き続き5年以上日本に在留していることで足ります。
※「定住者」の前の在留資格が「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」であった場合には、通算で5年以上として計算できます。
(4) 高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者
→前述の3.国益要件の本邦在留要件について、「高度人材外国人(※)」として3年以上継続して日本に在留していることで足ります。
※在留資格「高度専門職」を持っている外国人を指します。
→永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められる外国人の場合、前述の3.国益要件の本邦在留要件について、3年以上継続して日本に在留していることで足ります。
(5) 高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者
→前述の3.国益要件の本邦在留要件について、「高度人材外国人」として1年以上継続して日本に在留していることで足ります。
→永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められる外国人の場合、前述の3.国益要件の本邦在留要件について、1年以上継続して日本に在留していることで足ります。
※この優遇措置は高度専門職(相当の者を含む)外国人の配偶者や子には適用されませんが、永住者の配偶者、実子等の本邦在留要件は「1年以上」となっているため実質的に優遇されます。
(6) 外交、社会、経済、文化等の分野における我が国への貢献があると認められる者
→「『我が国への貢献』に関するガイドライン」に該当する者の場合、前述の3.国益要件の本邦在留要件については、引き続き5年以上日本に在留していることで足ります。
以上の「永住者」在留資格取得要件の現行の詳細については、「永住許可に関するガイドライン」(出入国在留管理庁HP)をご参照ください。
簡単ですが以上が在留資格「永住者」についての概要になります。参考になればうれしいです。